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2021.01.13
活動報告

自然栽培⇔減減栽培⇔慣行栽培

第7期卒業生 農業経営科1年制 渡邊毅巳さん

渡邊さんの歩み

今回紹介するのはABio7期生農業経営科1年制卒業の渡邊毅巳(わたなべたけし)さんです。渡邊さんは製造業で工場長として20年近く働いていましたが、40歳の時に奥さんの実家の農業を継ぐことになり退職。

その後ABioの特色あふれるカリキュラムに魅力を感じABioの農業経営科社会人コースに入学。卒業後は、兼業農家として主にお米を栽培しています。農業を始めた当初は大規模化や園芸転換を考えていましたが、そうした農業のブームに乗らずに、小規模だからこそできることがあると考え追求し、兼業農家として農業を続けています。

現在は加茂市でお米を中心に栽培しており、生産物はJA南浦に3割減々栽培米として大半をJAに出荷し、稲の育苗ハウスで栽培している野菜は基本無農薬で栽培しており、メルカリなどで販売しています。


無農薬で栽培している野菜

0から足してく農業

渡邊さんの田んぼでは肥料や農薬を100の状態から指定された量に減らしていく慣行栽培からの減々栽培ではなく、自然栽培や有機栽培などの0の状態から必要な時に最低限の農薬と肥料を与える減々栽培を行っています。

農薬は田植え直後の除草剤とカメムシ防除の年間で2回、肥料は有機肥料の元肥と稲肥のみで抑えています。その為渡邊さんの田んぼでは稲だけでなく雑草も生えています。


稲と雑草が混在している田んぼ

雑草はあまり伸びずに稲だけがよく成長しています。

なぜ雑草がそこまで伸びていないのかは、1枚1枚の田んぼの特性を理解し、それぞれに違った溝切を行い細かな水管理を行うことで、植物が生育に必要な水や肥料の取り合いに常に稲が勝ち続ける環境を作っているからだそうです。


中干した田んぼの様子

また必要以上に収量を上げないことで、必要以上の肥料を使用したり、過度な土壌改良をせずに、作物や土壌に負担をかけず収量よりも品質を重視したトレードオフの考えで栽培しています。

渡邊さんの田んぼでは、普通の栽培より早く中干しを開始しています。

中干後はよほどのことがない限り水を入れることがなくほかの田んぼと比べると葉の色が青々と元気な色ではなく、色が抜けた薄い色をしています。

収穫時期になると水や養分を使い切ったような見た目になっているといいます。


収穫時の様子

今後について

現在渡邊さんは義父が行っている水管理などの経験や勘をシステム化するために毎朝生育調査を行い気温や天候でどんな作業を行ったのかをノートに記録しています。今年はその生育調査のもと、いつもは1回で行っていた施肥の回数を肥料の総量は変えずに3回に分けて施肥を行ったそうです。それぞれの田んぼの性質、その時々の天候や傾向など記録を見返し判断し作業を決定していくというのはしっかりと地に足のついた農業のように感じました。

また、トレードオフをうたった玄米の商品化を目指しており、道の駅のバイヤーさんと話し「うまい玄米」を企画しています。


現在企画している商品

取材後にうまい玄米をいただいたので食娯楽で炊いてみましたが、非常にお米の味がしっかりしていて甘みもありとてもおいしかったです。炊き上がりの写真を撮り忘れたのは痛恨のミスでした…渡邊さんごめんなさい(汗)

渡邊さんは今後、兼業農家としてさほど農地を拡大することなく、細かな手作業で微調整を行うことができる兼業農家を目指していくそうです。

そして、それが農産物の平準化を阻止し、環境保全にもつながってくると考えています。

最後に

渡邊さんは昔キックボクシングの元日本スーパーバンタム級日本チャンピオンとして活躍していました。現在も兼業農家として働いている合間に空手を教えるなど格闘技に携わっているそうです。

今回の取材では、0から必要最低限を足していく減々栽培の話や、兼業農家として農業に対する思いなど、とても興味深いお話を聞かせていただきました。

お忙しい中、今回の取材に協力していただきありがとうございました。

文章:農業経営科大学併修コース4年生 田口椋哉

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